高等教育政策:2026年を展望する(4ページ目) | 教職員のための教育制度を紐解く

寄稿

教職員のための
教育制度を紐解く

学校経営アカデミー首席研究員
大学マネジメント研究会 会長
本間 政雄

高等教育政策:2026年を展望する

2026年1月

10兆円ファンド選定大学は4校か

 「世界と伍する研究大学の実現」に向けた10兆円規模のファンド(いわゆる大学ファンド)」による「国際卓越研究大学」第1号に指定された東北大学には、すでに154億円(総予算1806億円)の資金が配分されています。その後、東京科学大学が第2号に認定、京都大学が認定候補として体制強化計画案を「磨き上げる」ことになり、東京大学は、審査継続の扱いとなりました。今回の決定により、大学ファンドにより25年という長期にわたる重点支援を受ける大学はすべて国立大の4校となる見込みです。
 これにより、選定された4校の研究力は飛躍的に高まり、それに伴って外部資金も大きく増えることが期待されますが、懸念も少なからずあります。まず、選に漏れた、他の旧帝大や地方総合大学をはじめとする国立大、私立大との格差がこれらの大学個々の努力では埋めようもないほど大きくなり、我が国全体の研究力の底上げという観点から見て、問題が生じます。何故なら、優秀で独創的な研究者は、これら4校だけでなく、私立大も含めて多くの大学にいますが、彼らには10兆円ファンドによる集中投資の恩恵は及びません5. 22年度補正予算において「成長分野をけん引する大学・高専の機能強化に向けた基金」として3002億円が措置されたが、これはデジタル・グリーンなどへの学部転換等を支援するもので、大学ファンドに比べれば100対3の規模でしかない。[5]。いくつかの国立大が突出し、これらに準ずるような研究力を持った大学が、交付金・助成金も増えず、インフレや諸経費の高騰の下で「貧困状態」に置かれるという状況の広がりに留意すべきではないでしょうか。
 今一つの問題は、この支援が主に研究面に向けられており、学部学生の教育改善、改革に向けた計画が相対的に少ないことです。例えば、科学大の計画では、23の「主要KPI」のうち、教育関連は一つ(留学生比率学士3.6%→25年目に30%)ですし、京大の教育改革プログラムでも、博士学位取得者数増加(690人→25年目に2100人)、学部段階の第一線研究者による少人数型授業必修化、副専攻設置程度です。

終わりに

 少子化が進む中でも、26年度には新たに私立大学・短期大学が6校誕生します。新学部設置の動きも大規模私大を中心に活発なようです。中学校、高校の不登校生徒の増加6. 19年度から23年度の5年間で、不登校高校生は約5万人から約6.9万人へと約1.4倍に増えている。[6]やオンライン授業に対する抵抗感が減ったこともあり、現在通信教育課程(学部・大学院)の学生は約18.8万人に達し、短期大学にも約1.8万人が在学していますが、設置基準が通学制に比べて必要教員数や施設が少なくて済むこと、海外を含む全国から学生を集められることなどから、26年度も武蔵野大学が国際データサイエンス学部設置を予定するなど、今後とも通信制大学の動向が注目されます。

注釈

1. 交付金依存度は、法人化時の2004年の64.0%から24年には47.4%まで低下。
2. 財政制度分科会2025年11月11日提出財務省資料「文教・科学技術」1p。
3. 26年度以降は、文部科学省における経営指導対象法人が100法人程度に達すると想定。
4. 慶應義塾大学には、薬学部がなく、統合により初期投資なく新たな学部を手に入れられること、共立薬科大学としては、ブランド力、資金力のある大規模大学の一部になることができ、将来の持続可能性が高まるというメリットがあった。
5. 22年度補正予算において「成長分野をけん引する大学・高専の機能強化に向けた基金」として3002億円が措置されたが、これはデジタル・グリーンなどへの学部転換等を支援するもので、大学ファンドに比べれば100対3の規模でしかない。
6. 19年度から23年度の5年間で、不登校高校生は約5万人から約6.9万人へと約1.4倍に増えている。

株式会社JSコーポレーション 代表取締役社長 米田英一