高等教育政策:2026年を展望する(3ページ目) | 教職員のための教育制度を紐解く

寄稿

教職員のための
教育制度を紐解く

学校経営アカデミー首席研究員
大学マネジメント研究会 会長
本間 政雄

高等教育政策:2026年を展望する

2026年1月

私立大学政策は「チャレンジ大学支援」と「統合、縮小・撤退促進」の2方向に

 学部段階で学生総数の8割を受け入れているだけでなく、政治、行政、産業界、法曹・会計士・教員・医師・看護師など社会・経済のあらゆる分野における人材養成で大きな役割を果たしている私立大学ですが、少子化の下で学生確保に困難をきたす大学が年ごとに増加していること、分野別構成が文系に偏っていること、さらには教育の質が十分に担保されていないといった批判を受けて、今後、経営改革支援、デジタルなど理系分野への構造転換を図る「チャレンジ」大学や、研究力の高い大学に対し重点支援する一方、経営状況の厳しい私立大学に対しては、「統合、縮小・撤退」などを促す方策が展開されることになっています。
 まず、「チャレンジ」大学支援ですが、2025年度に引き続き、「社会・地域等の将来ビジョンを見据え、自治体や産業界等と緊密に連携しつつ、社会・地域等の未来に不可欠な専門人材(グローバルな学生や社会人等を含む)の育成を目的とし、教育研究面の構造的な転換等により、人材育成機能強化に向けた経営改革を行う大学・短大等55校に対し、1,000〜2,500万円程度を助成するとしています。
 加えて、「複数大学等の連携による機能の共同化・高度化(人的リソースやシステムの共用化、開設科目の相互補完など)」を行う15の大学グループに対して1件3,500万円程度の助成を行うとしています。(二つの事業の予算総額27億円)
 さらに、「成長分野等への組織転換を促進するため、理工農系学部等を新設した大学等について、大学全体の収容定員を5か年以内に学部等新設前の水準以内とすること等を要件に、完成年度を迎えるまでの設置計画履行期間中に必要な経常的経費について支援」するとしていますが、助成額は、一般補助予算2,782億円の内数であり、どの程度の助成規模になるかは分かりません。
 一方、「縮小・撤退」に向けた施策は、現在約40法人とされる「経営状況の悪化した」法人(大学)3. 26年度以降は、文部科学省における経営指導対象法人が100法人程度に達すると想定。[3]に対し、集中的に経営指導を行うものです。「経営状況悪化」の指標は、「資金ショートリスクが一定段階に至ること」であり、文科省は、そうした法人を「経営指導対象」として指定し、「経営改革計画」の策定を求め、原則5年間で計画の進捗状況をモニターし、状況に応じて縮小(学部等の廃止)・撤退等を勧告し、取組・進捗状況が不十分な場合は、2029年度以降私学助成の減額等を実施するというものです。
 なお、「統合」については、現実には、相互の条件に合う統合相手を見つけることは容易ではなく、また各種システム、人事制度、給与などのすり合わせ、同窓会の同意取り付けなど様々な調整作業が必要であり、多くの大学にとってはハードルが高いと考えられます。さらに、100以上あるとされる宗教系大学の存在や建学の理念の違いなども統合の障壁となりえます。実際、過去の統合の事例を見ると、慶應義塾大学と共立薬科大学の統合のように、分野が相互補完的で、相互に統合のメリットが明確であり4. 慶應義塾大学には、薬学部がなく、統合により初期投資なく新たな学部を手に入れられること、共立薬科大学としては、ブランド力、資金力のある大規模大学の一部になることができ、将来の持続可能性が高まるというメリットがあった。[4]、地理的にも近かったことが有利に働いたようです。しかし、こうした相互に有利な組み合わせは、特に統合の具体的な検討が視野に入る地方の私大にとっては、実現の可能性は低いようです。

株式会社JSコーポレーション 代表取締役社長 米田英一